ワインホリック・カフェ

年末になってくると、今まで全く動かなかったようなワインが大きく動くことがあります。

当然ワインショップである以上、売れるワイン、動きの良いワインを買い付ける傾向もありますが、美味しいワインしか買わないというのが基本。(完全にはできていませんが)有名であろうがどうだろうが、関係ないのです。逆に動きが悪いことが分かっていても良ければ買う。

私は知識偏重型の人は全く信じておらず、味わいが分かれば知識ってそこまでいらないと考えています。(知識を完全に自分の物としてワインの真の世界まで理解している人がいれば良いですが、私の知っている限りそんな人はほんの僅かしかいません。)要するにワインにとって重要なのは美味しいかどうか。いつ美味しくなるのか、どのように飲めば美味しいのか、どのように管理すれば良いのか、そこが一番重要であってそれ以外のことは実はあまり関心がありません。とは言っても30年以上この職業に携わっているとそれなりの知識がついてきますが、あまり知識に左右されてしまうようなことは嫌います。知識は先入観として感覚を鈍らせるようなところがあるから、このようにやっていると味わいの記憶は抜群になります。

ワインホリックはワインバーをやっていた頃からの在庫があるので動かなくても5年以内に動けば良いかなという余裕があります。ワインの世界は、ちゃんと寝かせることさえできればやはり在庫をどれだけ持っているかが勝負となるところもあり、仕入れたワインを一年以内に売り切ることなど考えたこともありません。当然自宅にセラーがあるのでできることですが、イギリスのワイン商のように良いワインを早い時期に見つけ売れなくてもそれを買っておくことが大事だと思います。初期のロバート・パーカーなどは凄く勉強になりましたし、主観が多く凄く面白かったのですが、最近の評論家は金にまみれていることを感じるほどに当てにならないことが多く、つまらないと感じることが多いですね。

ワインが大きく変わってきたのに、ワイン業界では扱い方が変わらず本当にワインが好きなのかなと不思議に思ってしまう人が多い。私にはワインそのものを楽しむよりもワインに携わっていることや知識を得ることを喜んでいるようにしか見えません。

テイスティンググラスで真剣に長い間香りをかいでいる人や、何度も何度も味わっている人を見るとワインのことを分かっていないんだなと思います。香りをかぎすぎると臭覚が鈍感になってきますし、何度も味わっていると温度も変わりますし唾液によって味わいも大きく変わってしまいます。テイスティングは一瞬のうちに行うことが正しい。自分の瞬間的な感覚と経験値によってワインを判定するべきです。経験値を高めたいのなら自分のふところでワインを買い、飲んで高めていくべきです。周りに飲ませてくれる人がいるのならどんどん活用してください。

女の子がよくお店でワインを飲んで「あ〜このワイン美味しい!」といってるのを目にしますが、嘘でなければこんな感じの方が正直でよろしい。

昔のソムリエはワインは美味しい美味しくないで判定したらいけない、作り手に失礼だ的なことを言っている人がいましたが、それは単に日本的な礼儀を婉曲してだけで、単に美味しいワインがその人に周りにほとんどなかったことを示しています。ワインはあくまでも個人の主観によって美味しい美味しくないで判断すべきなのです。食べることとワインを飲むことは同じなのです。

飲食店の場合は厳しさは身をもって知っているので、飲食店によっては仕入れ価格の方が大事でまともなワインを飲む機会さえない方もいらっしゃるでしょう。でもそんなことをしていてはいつまで経っても本当の世界を知ることはできないし、面白くもないのではないでしょうか。今の時代、苦労をしてなんぼなんてことはないですし、どれだけ楽しんで前向きにやっていくかが大切。

ワインの世界は他人を信用したら駄目です。もうその時点で負け。あくまでも自分がどう感じるかということが大事です。それほどにまやかしが多いのです。学校に行けば全てが分かるというのは幻想。あくまでも基本的な知識を付ける場所であって判定するのは自分なのです。

こつは、ワインの味わいを自分が食べる料理と同じように判定することです。分からないではなく自分が美味しいと思うかどうか、美味しくないと思ったら何故そうなのだろうと疑問を持つことなのです。料理を食べるときにあなたは美味しいかどうか分からないと思うでしょうか?

分からないから学校に行って学ぶ。それが間違いの始まり。多分分からないと思ったワインは単に美味しくなかっただけなのです。でも学校ではそのことは全くといって良いほど教えてくれないのです。

さてラシーヌがこれだけ大きくなったことを見てもフィネスやラフィネのワインがこれほどまでに売れるようになったことを考えると、業界よりも個人のワインラヴァーの方が実はワインのことをよく知っているのではと思います。

知識はプロの方が持っていても経験値はワインラヴァーの方がもっている。それが実情ではないでしょうか。


プロとは一体どうあるべきなのか。もう一度見直した方が良いのではないでしょうか、っと思っています。


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