最近高価なワインを飲んでいない、、。
最近、自宅や飲食店で楽しむワインと言えばリーズナブル系のワインばかりである。せいぜい高くても1万円まで。ほとんどが2000〜3000円のワインが中心となる。
試飲会に行って高価なワインを飲むこともあるが、せいぜいそんなところだ。
ヴァン・ヴィーノ・ブリュレをやめてしまったこともその理由の一つだが、実はここ数年高価なワインを飲んで、また飲んでみたいと思ったワインはごく少数。
ワインを飲み始めた頃は、利益の全てを良いワインに注ぎ込みしこたま飲んだ記憶が脳裏に焼き付いている。それを超えるワインが最近ほとんどないのである。
ワインを楽しむことが日常になった今、リーズナブル系のワインの方がしっくりくるし開くのも早く魅力を感じやすい。平和な今の時代がそのままワインに現れているのかと感じる。
昔に比べると酒よりも料理に向かっているので自然とこうなってくるのか、、。
最近飲んだ高価なワイン、ボデガス・ラボラトリオ・ルペストレ、これが唯一もう一度飲んでみたいと思わせてくれたワイン。個性が明確で明らかにポテンシャルが高くセンスの塊のようなワイン。平和な今、明確な目的意識や人生哲学が不明確な時代、ここまで明確に意思をワインに注ぎ込む姿だからこそ感動を呼ぶのだろう。
ワインの世界は未だに生産者側と飲み手との距離が遠い。つまり生産者によって作られた真の姿を味わえる機会はほとんどない。徐々に良くなって来てはいるが、本当の素晴らしさを体感することはなかなか出来ない。疑似熟成、輸送時の酸化の問題が未だに尾を引いている。
インポーターはワインが売れなければ存続できないために、飲食店に多くの指導をすることが出来ない。それは酒販店も同じ。飲食店は現在かつてない存続の危機に瀕しており、存続のためコスト削減を図りコンディション維持のための投資が出来ない。だからといって手をこまねいているわけにはいかない。平均値を上げるということだけでもしなくてはならない。
ワインの世界は昔から売ること、普及することが第一目標であって、コンディションは二の次なのだ。ワインビジネスとはこういうものというのが常識。
だから、未だにワインは銘柄主義。作り手が良ければコンディションなど関係ないというのが現実なのだ。本来の姿などどうでも良い、そんなこと言ったら白けるじゃないか、なんか昔よくこんな言葉を投げかけられた記憶がある。雰囲気さえ良ければそれで良いという感覚が未だにあるのだろうか。
こんな現状でワインショップとして何が出来るか、それがまずリーズナブルでも美味しいワインがいくらでもあると言うことを知ってもらうこと。
世は真逆でリーズナブル系のワインにはコストをかけずに高価なワインのみコストをかけたがるが、見ていると形だけで本質的な部分には何もお金をかけていない。つまり未だに見た目で騙すようなことが普通に行われている。分からないから大丈夫だろうと嘘八百。
リーズナブルなワインほど酒質が弱く悪くなりやすい。悪くなりやすいのは実は高価なワインも同じなのだが、美味しさが飛んでしまうといった方がわかりやすいだろう。もっている要素が少ないだけにちょっとでもバランスが崩れると美味しくなくなる。でも最も早く開いてくるために美味しさが現れやすい。まずはリーズナブル系のワインの中に実は素晴らしく美味しいワインがあるんだと言うことを知っていただきたい。それからもう少しハイクラスのワインを飲んでみる。そこで少しずつ価格の違いでどこまで味わいが違うのかを認識するのが正しい道のりかもしれない。
ワインはやはり普段経験できない世界を見られること、そして感動できることに価値があるのであって、それがなければお酒として最も高価な部類に入るワインに価値はない。
お金に余裕がある人は、トップダウンで飲んでみるのも悪くない。高価なワインこそ、その作り手の真の姿が見えてくる。実際私がワインを飲み始めたときもそうだった。でも高価なワインほど酷い状態のワインが多ということは知っておいた方が良い。有名なワインほど売れやすいから。
なんかこうやって書いてると愚痴が多くなってくるが、現在のワインがこのような状況であるのはまた一つの新しい時代が始まったことを示している。代々受け継がれてきた作り方ではなく、科学的に解明されつつある醸造の世界や栽培方。代が変わりこれらを学んだ生産者たちが作るワインは画一的になりがちで、個性の幅は明らかに縮小している。でも昔から本当に優れたワインは実はそれほど多くはなかったわけだが、それは今でも変わっておらず酷いワインが減っただけ。とりあえず何となく飲めるワインは明らかに増えている。まさに飲食店と同じで500円出せばそこそこ美味しい食べ物がある。今の世はそんな流れ。だからこそ今までの経験則を捨て新たに優秀な作り手を探し出す時が来たのだ。今はまだ発展途上だけに優秀な生産者を育てることが大事だろう。それをしているのがラシーヌ。彼らの選別が今世界中から注目されている。
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